矢野静明さん 個展2014/02/24 14:51

画家、矢野静明さんの個展が座間駅前の「ギャラリーアニータ」で開かれました。作家トークもあり、楽しく充実した時間を過ごせました。

幼少時代の体験が絵を描くことと結びついているというお話が興味深かったです。ふたつの貴重な体験談を話されました。

保育園で黒板に自分の名前を書いた時、「の」の字をわからなくなり、渦のように線を引き続けてしまった女の子のこと。その字を見たときの衝撃がわすれられないと矢野さんは言います。「の」は、「の」という意味を越え既成概念をはずし、黒板の上で限りなくひろがっていく。その衝撃に線の力、形の力を感じ取ってしまったのでしょう。

また、さるすべりの枝を書いた時。線を移動していく。絵とものが自分の手(身体)でつながっていくということに驚いた。木と手と絵がつながった時、外部にむかって内部の目が開いた。絵を描く喜びがそこにあった・・。とてもわかる気がします。

矢野さんの持続する、反復する、書くという内在の力は、この二つの出来ごと(出会い)が根底にあるからなのでしょう。プリミティブな内在から湧き上がる力を感じます。

また光と影のコントラストで奥行きを感じさせる木炭画と平面的な色彩を使った作品の対比もよかったです。

80年代、色がなにかわからなくなったときに、白黒の木炭画がはじまり、アメリカ、バーモンド州の積雪地帯、色のない土地でくらすことによって色のある作品が出現するその過程も、画家の身体、内在の力と結びついているようでおもしろく聞きました。

フレームのない作品、形にとらわれない。矢野さんの作品は魅力的です。遊牧民の織物から発想を得たという「移動・移民」シリーズ。布のような水彩紙(フレームがない)に黒の木炭で地塗りをし、色のあるソフトパステルで点を打っていく。点描・繰り返される形が永遠と続く、この作品群。原初的な動く民の力が伝わってくるようで広大な広がりがあり魅力的でした。

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