『ヒミズ』2012/03/29 00:09

映画『ヒミズ』を見ました。主演の若い2人もよかったけど、暴力をふるう父親役をやった光石研の演技がよかった。本当に憎たらしくて自己中心的な父親で・・。スゴイ。

 父親を殺した貸しボート屋の少年が、やはり家庭に事情のある少女と知り合い、絶望の中でもがきながら、それでも生きていこうと微かな光をつかみ取るまでのお話です。「住田(少年の名前です。)頑張れ」という教師のあざとい言葉。映画のラストシーンでもう一度この言葉は繰り返されます。少女が少年に、一緒に走りながら叫ぶ「住田頑張れ」。同じ言葉なのに。ふたりのぎりぎりの体験を通したからか、言葉は全く変わってくる。生きもののように変化するんだ・・・と、実感しました。一途に少年の心に寄り添おうとする少女の強さ。女ってスゴイ。

映画「女の子ものがたり」2009/09/29 14:26

 先日、講師をしていた時からの古い友人と渋谷のシネクイントで映画「女の子ものがたり」を見てきました。○十代の女性ふたり、『「女の子ものがたり」は、ちょっと気恥ずかしいね・・。』なんて言っていたのですが、なかなか、とてもいい映画でした。
 
 西原理恵子のマンガが原作です。スランプに陥り、作品の描けなくなった漫画家が、思い出すのは、少女時代。仲の良かったきいちゃんとみさちゃんとの大切な時間です。

 どこのお話しなのか地名が映画には出てこないのですが、(ロケは愛媛県)片田舎が舞台です。咲き乱れるひまわり。猫じゃらしの生い茂る坂道。真っ青な空へと続く海原。赤い陸橋。深緑の木々が覆う山々。素晴らしい自然です。その中で貧しいけれど、漫画家志望のなつみは友人たちとかけがえのない日々を送っています。

 きいちゃんとみさちゃんは、人生の困難に立ち向かい、田舎で男の人につくして平凡な人生を選ぶけれど、でも、それもとっても輝いて描かれています。漫画家になるべきか、田舎をでるべきか、悩むなつみ。そのなつみの背中をぐいっと押すように、きいちゃんはなつみにむかい、「あんたはうちらとは違うと思ってるやろ。この街から出て行け。」と言葉を投げかけ、大げんかをするのです。なつみのことを思い、わざと汚い言葉をなげるきいちゃん。健気で切ないきいちゃんのセリフ、ジーンときてしまいます。

 登場人物もいいのですが、もう一つ、画面の色の美しさもこの映画の魅力です。海、山、空、雲、植物、・・、さまざまな自然の色。そして、登場する3人の女の子たちも、それぞれのイメージにあわせ、黄・青・ピンク・・と色がまた、その背後にちりばめられていきます。生命力溢れる色の美しさが、物語に奥行きを与えていきます。

 友人たちとの秘密基地、その廃屋の壁一面に、なつみが描く絵がありました。小さな女の子が、道を眺めている。道には何故か、不思議な光景が・・。歩みの遅い亀の背中に大きな地球が乗っています。旗を立て、遠い山々や波間を渡って行こうとしています。その絵もまた、原色の美しい色で彩られ、遠く続いていくのです。。人生は辛く、思った以上に、困難で、大変なものだけど、女の子の(女の子だった時間をそっと心に抱える人の??)それぞれの道はしっかりと続いているんだ。最後に描くことへの希望を思い出す映画の主人公の気持ちと重なって、見終わったあと、不思議な爽快感が広がる映画です。

 映画が終わった後は、マークシティー京料理店「御蔵」で友人と尽きないおしゃべり・・。とても楽しいひとときでした。