マックス・エルンスト展2012/05/29 14:44

 横浜美術館、マックス・エルンスト展に行ってきました。百頭女の挿絵で名前だけは知っていました。挿絵の官能的で美しい、ちょっと閉ざされた世界かな??と思う作品群しかしらなかったのですが、印象は一変しました。

 幾何学的な図形を重ねたシュールなリトグラフ。動物なのか人なのかわからない謎の生物があらわれる呪術的な油彩画。森や湖、生命が過剰なほど躍動する作品の数々・・。その多岐にわたる作風の変遷に・・、あっというまに見る時間が終わってしまいました。おもしろかったです。

 私が特に気に入ったのは「自由の称賛」という油彩画です。真っ黒な巨大な森が広がり、その中にぽつんと置かれた鳥かご。鳥かごの中には、真っ白な鳥。鳥かごの中にいて動けないはずの鳥なのに、真っ白な鳥は、巨大な邪悪な森と対峙するようなとてつもない広がりを感じさせるのです。凜とした魂そのものが立っているような・・。忘れられない自由ってこういうものなのかも・・。不思議な絵です。

詩と音楽2012/05/29 15:53

 新宿にあるジャスパー・サムライに詩の朗読を聞きに行ってきました。暗いステージの周りに招き猫がいっぱい置いてあってびっくり。猫パワー全開・・。結界に迷い込んでいくようです。

 海埜今日子さんの朗読、音楽とよくあって素敵な朗読でした。

 「ゆぶねをうかべて、」浴槽の世界なのですが、海埜さんの言葉にかかると、レース編みのように美しい。水紋が静かに広がっていくように世界の境目、境界に・・、身体の隅々に・・、言葉がしみ通っていくのです。温かく華やかに・・。言葉の湿度、温度、手触り、色彩・・。行っては帰ってくる。言葉が豊富に生き生きとうち広がる。湯舟の中の漣を思います。

 「おきにいりをうて」書くこと。読むこと。書物との狭間。それは、詩人として経てきた道筋でもあり、はかなげなノスタルジーを感じました。降り積もる日々は遠い羽ばたきとなって心の内にやるせなさが残ります。

 「とりのさがながあなたをいばしょだ」金環日食の話がおもしろかったです。とりでもさかなでもなく、おとこでもおんなでもなく、あなたでもわたしでもなく・・・。現実と夢の世界の狭間にいる。美しい日食のように消えていく夢こそが現実ではないのか。とらえることができない消えていくもの、過ぎていくもののかすかな息吹を言葉で体現する。繊細に言葉を織り込んでいく声と絡む音楽。境界をたゆたう切なく心地よいひととき。

 西野りーあさんの北欧やギリシャ神話の世界の朗読も古代からの風が吹きこんでくるようで魅力的でした。独特の世界観。また、聞いてみたいです。