『雲の人びと』ジェミア&ル・クレジオ村野美優訳・『f植物園の巣穴』梨木香歩 ― 2012/07/25 16:53
『雲の人びと』(ジェミア&ル・クレジオ著・村野美優さん訳)を読みました。
ル・クレジオが妻ジェミアの祖先の地、西サハラへと旅するお話しです。果てのない砂漠をひたすら横断する日々。岩の、石の、言葉を刻むように作家は旅を続け、身体に風土を人との出逢いを記憶していきます。移動しつつ、現実を越えて原初的な人々の営みの中へ、伝え聞く神話の世界へ。一体となって帰還していくのです。主役はあくまでも砂漠。今まで妻から語り聞かされた世界がやっと現実の血肉となって作家の中に到来していきます。過去や未来も交ざる至福の時間が訪れるのです。翻訳の詩的で美しい言葉が広大な世界を生き生きと再現させてくれます。挿入された写真もその地に誘ってくれるようで魅力的です。
「こうして谷の隅々を読み取り、それらを身体に記憶し、その変化や 色の変移を推しはかり、雲の様子を、西に筋雲を、南に軽やかな羊雲を、東の方、錆びた水中の景色のように緑っぽく曇った地面の上に、膨らんだ青白い斑点を窺うことで、わたしたちは何日も、何ヶ月も、何年も過ごすことができるであろう。
遊牧民と定住者(つまり都会人)を分かつもの、それは船上の船乗りや、氷上のエスキモーの能力、すなわちほかの者には虚空しか見えない場所で、わずかな変化に気づき、多様なものに感じ入ることのできる能力である。ここでわたしたちは何もかも学ぶ必要がある。」
(本文より引用)
梨木香歩さんの『f植物園の巣穴』も読みました。
植物園の椋の木のうろに落ちた園丁である「私」。うろの中には川が流れ、その流れをつたっていくと幼ない頃住んだ家の門前にたどりつきます。死んだはずの懐かしい人たちや不思議なしゃべる動物たちが現れ、時間が現在と交じり、まき戻り、異世界の扉が開かれるのです。
川をつたい異世界を旅することで意識的に忘れていた大切な人々の思い出が死が「私」の中に蘇ります。辛い体験を受け入れることにより、「私」の意識は他者へと注がれ、前向きに開かれていくのです。
そして最後には「私」にとって嬉しい知らせが・・・。このお話も生命の源泉を言葉の力で探ろうとする一つの長い旅だと思いました。
ル・クレジオが妻ジェミアの祖先の地、西サハラへと旅するお話しです。果てのない砂漠をひたすら横断する日々。岩の、石の、言葉を刻むように作家は旅を続け、身体に風土を人との出逢いを記憶していきます。移動しつつ、現実を越えて原初的な人々の営みの中へ、伝え聞く神話の世界へ。一体となって帰還していくのです。主役はあくまでも砂漠。今まで妻から語り聞かされた世界がやっと現実の血肉となって作家の中に到来していきます。過去や未来も交ざる至福の時間が訪れるのです。翻訳の詩的で美しい言葉が広大な世界を生き生きと再現させてくれます。挿入された写真もその地に誘ってくれるようで魅力的です。
「こうして谷の隅々を読み取り、それらを身体に記憶し、その変化や 色の変移を推しはかり、雲の様子を、西に筋雲を、南に軽やかな羊雲を、東の方、錆びた水中の景色のように緑っぽく曇った地面の上に、膨らんだ青白い斑点を窺うことで、わたしたちは何日も、何ヶ月も、何年も過ごすことができるであろう。
遊牧民と定住者(つまり都会人)を分かつもの、それは船上の船乗りや、氷上のエスキモーの能力、すなわちほかの者には虚空しか見えない場所で、わずかな変化に気づき、多様なものに感じ入ることのできる能力である。ここでわたしたちは何もかも学ぶ必要がある。」
(本文より引用)
梨木香歩さんの『f植物園の巣穴』も読みました。
植物園の椋の木のうろに落ちた園丁である「私」。うろの中には川が流れ、その流れをつたっていくと幼ない頃住んだ家の門前にたどりつきます。死んだはずの懐かしい人たちや不思議なしゃべる動物たちが現れ、時間が現在と交じり、まき戻り、異世界の扉が開かれるのです。
川をつたい異世界を旅することで意識的に忘れていた大切な人々の思い出が死が「私」の中に蘇ります。辛い体験を受け入れることにより、「私」の意識は他者へと注がれ、前向きに開かれていくのです。
そして最後には「私」にとって嬉しい知らせが・・・。このお話も生命の源泉を言葉の力で探ろうとする一つの長い旅だと思いました。
コメント
_ 村野美優 ― 2012/08/06 16:49
『雲の人びと』訳者の村野です。ご丁寧に読んでくださり本当にうれしいです。引用部分の初めの文章は訳すのにとても苦労しました(まだ満足な訳ではないのですが)。mizushimaさんのおっしゃるように詩的な訳になっていると良いのですが。。。原書はもっと写真集のような、カタログみたいな作りで、本書の作りのほうがわたしは好きです。この見事なデザインが本書の一番の魅力かもしれませんね!梨木香歩さんの『f植物園の巣穴』も以前読んで、涙が出るほど感動しました。ル・クレジオの文学も梨木さんの文学も、生死の際を経巡りながら、力強く生き抜いてゆくことの勇気を教えてくれますよね。並べて書いてくださり、本当にうれしく思いました。
_ mizushima ― 2012/08/17 17:52
村野さん、コメントありがとう。『雲の人びと』と『f植物園の巣穴』わたしも共通するところを感じました。主人公が、自分と周りの人々の時間の流れに入りこみ、気がつかなかった遠い大切な思い(生の糧となる鮮やかな発見!)にまでたどりつく。その行為は、(旅する場所は違っても)すがすがしく、非情な日常を切り開く力を読み手に与えてくれます。
また、お仕事期待しております。
また、お仕事期待しております。
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