抽象と形態 ― 2012/04/20 20:25
川村記念美術館の「抽象と形態」展に行ってきました。
本来見ている当たり前の形、それを疑うように作り手の内なる視点から描いていくと様々な形象が現れる、そんな作品が多かったです。目に見えない作者の内的世界が対象物とクロスして、もう一つの世界へと変換していく、その過程がそれぞれ個性的でおもしろかったです。
赤塚祐二さんの作品が良かったです。長い道が画面いっぱい続いているのですが、でも、どこにもたどり着かない。周りの木々や山々は半分形をなくし、空中に自在に浮いていくようです。重力とは無関係に解き放たれた形。形が形として機能する前の原初的なカオス、エネルギーを感じます。
永遠にあるものにはたどり着かない。たどり着かないからこそ、形を離れた、又は形への途上の大きな世界が渦巻くように広がっていく。
先日、鎌倉画廊で、赤塚さんと詩人の西元直子さんとのコラボも拝見しました。過去を今を、心情の微細な襞を言葉で繊細に丁寧にすくいとる西元さんの詩世界は時間を空間を越えて広がります。形から解放され飛び出した赤塚さんの絵画と呼応し合いとても興味深かったです。
本来見ている当たり前の形、それを疑うように作り手の内なる視点から描いていくと様々な形象が現れる、そんな作品が多かったです。目に見えない作者の内的世界が対象物とクロスして、もう一つの世界へと変換していく、その過程がそれぞれ個性的でおもしろかったです。
赤塚祐二さんの作品が良かったです。長い道が画面いっぱい続いているのですが、でも、どこにもたどり着かない。周りの木々や山々は半分形をなくし、空中に自在に浮いていくようです。重力とは無関係に解き放たれた形。形が形として機能する前の原初的なカオス、エネルギーを感じます。
永遠にあるものにはたどり着かない。たどり着かないからこそ、形を離れた、又は形への途上の大きな世界が渦巻くように広がっていく。
先日、鎌倉画廊で、赤塚さんと詩人の西元直子さんとのコラボも拝見しました。過去を今を、心情の微細な襞を言葉で繊細に丁寧にすくいとる西元さんの詩世界は時間を空間を越えて広がります。形から解放され飛び出した赤塚さんの絵画と呼応し合いとても興味深かったです。
水はわすれている そしておぼえている ― 2012/04/24 16:32
詩人北爪満喜さんの作品展「水はわすれている そしておぼえている」(中庭ノ空)に行ってきました。
壁面に飾られた写真。水に満ちた世界です。写真の下には北爪さんの詩編から抜き取られた水に関する言葉が飾られ、その言葉と映像が水紋のように響き合います。
水面いっぱいの蓮の花。伸びる木の根。池を泳ぐ鯉。水面に映る青空。水鳥の白い柔らかな羽・・・。
水を直接写していなくても、そこには水の気配があります。静かな風景です。でもたどっていくと生命の源に通じるような力強いエネルギーを感じます。前を向く水。生命をつなぐ、命を手渡す水。大震災後、忘れられた水の光の部分が繊細に写し取られていると思いました。水に対し今を渇望する詩人の深い思いがこのような色鮮やかな光に満ちた世界を作り出すのでしょう。
和紙にプリントされた写真も入り口のガラスに飾られていました。和紙の繊維と被写体が不思議に混ざり合い、体内の染色体の上に、風景が写し出されたような・・。身体の内部と外部が混ざり合う不思議な空間が生まれていると思いました。
壁面に飾られた写真。水に満ちた世界です。写真の下には北爪さんの詩編から抜き取られた水に関する言葉が飾られ、その言葉と映像が水紋のように響き合います。
水面いっぱいの蓮の花。伸びる木の根。池を泳ぐ鯉。水面に映る青空。水鳥の白い柔らかな羽・・・。
水を直接写していなくても、そこには水の気配があります。静かな風景です。でもたどっていくと生命の源に通じるような力強いエネルギーを感じます。前を向く水。生命をつなぐ、命を手渡す水。大震災後、忘れられた水の光の部分が繊細に写し取られていると思いました。水に対し今を渇望する詩人の深い思いがこのような色鮮やかな光に満ちた世界を作り出すのでしょう。
和紙にプリントされた写真も入り口のガラスに飾られていました。和紙の繊維と被写体が不思議に混ざり合い、体内の染色体の上に、風景が写し出されたような・・。身体の内部と外部が混ざり合う不思議な空間が生まれていると思いました。
ブコウスキー詩集・ブローティガン詩集 ― 2012/04/29 15:22
中上哲夫さん翻訳のブコウスキー詩集『指がちょっと血を流し始めるまでパーカッション楽器のように酔っぱらったピアノを弾け』を読みました。
1920年ドイツで生まれ、3歳でアメリカに渡り、ロサンゼルスやニューヨークで貧困の中、ビート詩人として活躍した作家です。彼の人生を記すように、激しく言葉が刻まれていきます。麻薬と酒に溺れた日々。リアルなストーレートな表現。
難解な比喩はなく、私小説を読むように、言葉に導かれます。言葉とともに生きることを駆け抜けた、痛々しいまでの疾走感。
「タフな相棒」という詩は、孤独な作者と幻覚の中で生じる言葉が、リアルな同居人のように同じ部屋で生活していて、言葉は精気を吸い取る生きもののようで。不思議なちょっと不気味な詩編でした。
中上哲夫さん翻訳のブローティガン詩集『突然訪れた天使の日』も読みました。1935年生まれ。アメリカのビートニックを代表する詩人です。社会から落ちこぼれた世界を描きながらストレートな表現をしたブコウスキーとは違い、斬新な発想。言葉の結びつきの奇抜さ、おもしろさ。俳諧に近いウイット。どこか突き抜けたところがあり、いっきにおもしろく読めました。言葉の造形が美しく、読んでいると目の前に深淵で開放的な映像が広がっていきます。
恥ずかしながらビート詩人の作品を初めて読みました。ブローティガンの「モンタナ財産目録」引用しておきます。
「モンタナ財産目録」
時速85マイルで走る車のフロントガラスに
サフランの花びらのようにたたきつけられた虫一匹
とスピードでなめされたその虫の上にひろがる青空にうかんだ
白い雲一片。
1920年ドイツで生まれ、3歳でアメリカに渡り、ロサンゼルスやニューヨークで貧困の中、ビート詩人として活躍した作家です。彼の人生を記すように、激しく言葉が刻まれていきます。麻薬と酒に溺れた日々。リアルなストーレートな表現。
難解な比喩はなく、私小説を読むように、言葉に導かれます。言葉とともに生きることを駆け抜けた、痛々しいまでの疾走感。
「タフな相棒」という詩は、孤独な作者と幻覚の中で生じる言葉が、リアルな同居人のように同じ部屋で生活していて、言葉は精気を吸い取る生きもののようで。不思議なちょっと不気味な詩編でした。
中上哲夫さん翻訳のブローティガン詩集『突然訪れた天使の日』も読みました。1935年生まれ。アメリカのビートニックを代表する詩人です。社会から落ちこぼれた世界を描きながらストレートな表現をしたブコウスキーとは違い、斬新な発想。言葉の結びつきの奇抜さ、おもしろさ。俳諧に近いウイット。どこか突き抜けたところがあり、いっきにおもしろく読めました。言葉の造形が美しく、読んでいると目の前に深淵で開放的な映像が広がっていきます。
恥ずかしながらビート詩人の作品を初めて読みました。ブローティガンの「モンタナ財産目録」引用しておきます。
「モンタナ財産目録」
時速85マイルで走る車のフロントガラスに
サフランの花びらのようにたたきつけられた虫一匹
とスピードでなめされたその虫の上にひろがる青空にうかんだ
白い雲一片。