オブジェの方へー変貌する「本」の世界(うらわ美術館)2010/01/11 10:45

 今年初めての美術館訪問。うらわ美術館『オブジェの方へー変貌する「本」の世界』展にいってきました。アートの世界の本は、ただ読むためのものだけではなく、遊び心いっぱい。一冊の本の中につまった小宇宙といった感じです。

 とくにひかれたのは、安部典子さんの「Liner-Actions Cutting Project」と「Through the Edges」です。地図の楽しみ方を書いた本と洋書でしょうか、2冊の本が置かれているのですが、中は等高線のように段々にカッティングされています。本の中に断層が出来ているようです。思えば、本を読むということも、地形を辿るということと似ているのかもしれません。読むという地道な作業。本の中を辿っていくと、心に引っかかる素晴らしい鉱石がみつかるように、地形をたどり、あてもなく歩き続けると、ふっと驚くような風景に出会えたり、発見をすることがあります。

  焼かれた本がオブジェとして、会場に多数あったのも興味深かったです。

 荒木高子さんの「砂の聖書」。聖書が焼かれ、今にも崩壊しそうな砂の本。戦争の後(愚かな人間の行為の後)に残った形のようでもあります。それでも残された未来へのかすかな希望のようなものが感じ取れるのが不思議です。

 西村陽平さんの「CO ham radio」「新修漢和大字典」は焼かれた本でも、また違う風景を見せてくれます。何も手を加えず1000度以上の高温で焼いた本は、白い柔らかな布のように美しく繊細に仕上がります。それは、人の歴史や重いものを感じさせるのではなく、逆に本の持つ意味までをもそぎ落としたもの、ただ物質としての美しさをそれだけの、喜びを体現しているようでもあります。対照的な作品です。

 おもちゃ箱のような作品もありました。

 マルセル・デュシャンの「グリーン・ボックス」と「トランクの箱」。作成に至るまでのメモや、「大ガラス」「泉」などのデュシャンの有名な作品の極小レプリカが、箱の形をした本の中にびっしりとつまっています。本を開けると、作品の数々が飛び出して、まるで小さな自分だけの展覧会を開くことができるよう。かわいくて、とてもおもしろいです。

 実験室で作られたような本もありました。

 河口龍夫さんの「熱」。蛇腹折りにした和紙に鉛をたらし込み、その鉛が和紙にひろがり、形が薄れていく過程が段々に読み(?)取れます。時間の推移を本の形に閉じこめたのでしょうか。

 山口勝弘さんの「LIBER LIBER」は斬新です。
 
 鏡面で覆われた箱。これを作者は本だといいます。鏡の本を持って移動するたび、またはその本が、どこかに置かれるたび、本の周りの景色(世界)が本の中に映ります。次のようなコメントが作品に付けられています。
 
 本というよりも自由な本 それとも暇な本
 鏡の本は世界を開封する

  世界を開封する本。本によってどんどん世界が新しく切り開かれていく。風通しがよく、柔軟で・・・。物の見方が変わってくるようでいいですね。

 遊び心一杯の、アートしての本の可能性を十分に楽しませてもらえる、自由な時間を味わうことができました。

下北沢「さわ」2010/01/31 22:27

娘の誕生日祝いに、下北沢まで食事に行ってきました。南口商店街を抜け、京都の町屋風のお店、鉄板焼き「さわ」に行きました。中のつくりは、レトロで楽しめます。ステンドグラスの窓飾りや、昭和を思わせるような古いポスターが飾ってあります。

 帰りは商店街をぶらぶらと。古着屋や古道具屋。不思議なお店がたくさんあって、異空間。おもしろかったです。